健康
※このページはサステナビリティレポート2016の記事内容です。
<トピックス3>感染症診断システム
開発途上国向けの結核の高感度・迅速診断キットの開発
結核はエイズ、マラリアとともに世界三大感染症の一つで、全世界で年間960万人が罹患し150万人が死亡、なかでもアフリカや東南アジアなど開発途上国で罹患者の割合が多くなっています。さらに開発途上国ではHIVの感染者も多く、免疫力が低下するHIV感染者は結核に罹患するリスクが非常に高いため、定期的な結核診断と早めの投薬治療が強く求められています。
富士フイルムは、写真の現像プロセスで用いる独自の銀塩増幅技術を応用したイムノクロマト法※1によって発症初期のインフルエンザウイルスを検出する診断システムを開発しました。この技術を世界の様々な感染症の早期発見につなげていくために、2015年2月にエボラ出血熱の迅速診断システムに関する共同研究を開始。2016年3月には、スイスのFIND※2と結核の高感度・迅速診断キットに関する共同開発契約を締結。この開発では、これまで開発途上国で用いられていた患者の喀痰(かくたん)からの診断ではなく、尿に排出される結核菌特有の成分に着目。電源の確保が難しい開発途上国の現場でも手動で操作できるよう、カートリッジに検体を滴下するだけで結核菌の有無を判定できる簡便、迅速、安価で診断能力の高い診断キットの開発を目指しています。これにより喀痰が簡単に採取できない小児・老人の患者や、喀痰での検査自体が有効ではない肺外結核の患者(HIV感染者の多くが罹患)にも検査が容易になります。
なおこの開発は、日本発の革新的な治療薬、ワクチン、診断薬の創出を目的とするグローバルヘルス技術振興基金(GHITFund)に採択されており、2億1,600万円の助成を受け、2016年4月から2017年10月までの開発期間を予定しています。
※1 イムノクロマト法:試薬に滴下した検体(鼻腔ぬぐい液など)中に被検物質(ウイルスや細菌など)が存在すると、試薬中の標識抗体と結合して抗原抗体複合体が生成され、この複合体があらかじめ検出ライン上に線状に塗布された抗体に捕捉されると、陽性(抗原あり)を示す色付きラインが表示される診断方式。簡便、迅速に結果を得られることから、処置を急ぐ必要がある感染症の診断に多用される
※2 FIND(Foundation for Innovative New Diagnostics):開発途上国に適した、感染症の新たな診断技術の開発と普及を目的とした活動を行っているスイスの非営利組織
世界の結核の現状(2014年)
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