【重点課題1】地球温暖化対策の推進
※このページはサステナビリティレポート2016の記事内容です。
基本的な考え方
富士フイルムグループ「自己託送」に関わる拠点の所在地(2016年3月現在)
富士フイルムグループでは、CO2削減の対象領域を自社内の直接的な活動だけでなく、製品・サービスのライフサイクル全体(原材料の「調達」、製品の「製造」、「輸送」、「使用」、「廃棄」)でのCO2排出量にまで広げ、これを管理指標として、「CO2排出量を製品のライフサイクル全体で、2020年度までに30%削減(2005年度比)」の目標を設定(2010年4月)し、グループ全体で継続的な削減に取り組んでいます。2012年度からは、スコープ3※基準でのCO2排出量も算定し、適宜、情報開示を行っています。製品開発においても、開発初期に設定した目標の達成度を開発後に審査する環境配慮設計の仕組みに基づき、環境に配慮した製品開発を行い、CO2削減への貢献を図っています。
※スコープ3:企業による温室効果ガス排出量の算定・報告の対象となる「範囲(スコープ)」の一つ。スコープ3は原料調達、製造、使用、廃棄、流通や営業活動など自社外の関連活動からの間接排出を定義する。環境省/経済産業省連名の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」に準拠して算定
目標
- ライフサイクル全体のCO2排出量を2020年度までに2005年度比30%削減
トピックス
外部機関からの評価
環境負荷削減、気候変動情報開示などで各賞を受賞
第12回LCA日本フォーラム表彰の授与式
富士フイルムは、第12回LCA日本フォーラム表彰※ 1「奨励賞」を受賞しました。2003年以降長年に渡り進めてきた、LCAを活用した取り組み(社内体制整備、人材育成、環境配慮設計組み込み、製品ライフサイクル全体のCO2排出量削減など)とその環境負荷削減の成果が高く評価されたものです。
また富士フイルムホールディングスは、国際的な非営利団体CDP※2から、気候変動情報開示先進企業(Climate Disclosure Leadership Index、CDLI)に初選出されました。CDPは、毎年、企業の気候変動情報開示を求める調査を実施しており、富士フイルムホールディングスはディスクロージャースコアで100点満点を獲得しました。富士フイルムグループは、今後もグループ全体での環境負荷削減に取り組むとともに、ステークホルダーの皆様への情報開示も積極的に推進していきます。
※1 製品ライフサイクルでの環境負荷削減に向けた、LCAに関わる優れた取り組みを顕彰する、2004年開始の表彰制度
※2 機関投資家を代表し企業等の重要な環境情報を収集・評価する非営利団体。調査対象は、気候変動、水、森林
欧米における環境負荷低減活動
低炭素エネルギーの活用や水使用量の削減策を実践
●オランダ初の巨大共有廃水処理プラントの建設
FUJIFILM Manufacturing Europe B.V(. EF)は、オランダにある複数の企業とDommel水道委員会による初の大規模共有廃水処理プラントの建設プロジェクトに参加、2015年11月にEF敷地内に建設するプラントの起工式を行いました。この廃水処理プラントを活用し、参加企業が水を再利用することで、各社の環境影響を最小化し、廃水処理コストも抑えることができます。またこのプラントは廃水をきれいな水にして放出するとともに、廃水処理で出る汚泥をバイオガスに変換できるなど、多くの利点があります。なおこのプラントの運用開始は、2016年夏の予定です。
●全面風力発電での生産操業開始(オランダ)
EFの生産操業のために必要とされる100ギガワット時のエネルギーは、平均的な家庭の電気使用量30,000軒分に相当
FUJIFILM Manufacturing Europe B.V(. EF)は、2016年1月13日にオランダのエネルギー会社Enecoと正式に契約し、風力発電だけの操業を開始しました。EFは2011年から始まったEnecoとの共同プロジェクトにより、敷地内にある5台の風力タービンから総電力使用量の20%を賄っていましたが、今回トーレンにあるEnecoの風力発電所からもエネルギー供給を受けることで、全面風力発電での生産操業が可能となり、完全なカーボンニュートラルを実現しました。
●造園改築により水使用量を削減(アメリカ)
23,183平方フィートの庭園にあった植物を、干ばつ耐性がある植物や最低限の水やりですむグランドカバー(地面を覆い隠すための植物)に植え替えた
カリフォルニアはこの5年間干ばつ状態にあり、適応策としてカリフォルニア州が節水の義務化と水の配給制を導入しています。FUJIFILM North American Corporation(FNAC)は率先して節水を実施するため、ビルのオーナーであるCypress Land Companyと協力し、大量の水を必要とする芝生や草を取り除いて干ばつ耐性植物に植え替え、水の消費量を最小限にする点滴灌漑へと変更しました。これにより2015年度の水使用量は、2014年度の約60%にまで減っています。
●太陽光発電で39.62トンのCO2排出量削減(イギリス))
太陽電池パネルには、富士フイルムの太陽電池用バックシートを使用
FUJIFILM Speciality Ink Systems Ltd. (FSIS)は、自家発電を実施するため、敷地内の1,320㎡の広さに、太陽光発電のための800枚の太陽電池パネルを設置しました。なお同設備は2016年2月1日からフル稼働となり、2016年3月末までに39.62トンの炭素をオフセットしました。
OPINION 「地球温暖化対策の推進」への第三者意見
製品のライフサイクル全体でのCO2排出の大幅削減を評価
国連環境計画・金融イニシアティブ
特別顧問
末吉 竹二郎 氏
プロフィール
UNEP FIに関わるほか、中央環境審議会など各種審議会委員、川崎市、鹿児島市の環境アドバイザー、大学非常勤講師、企業の社外役員、財団理事などを務めている。環境と金融、企業の社会的責任などについて講演などで啓発に努める。
2015年度の実績で特筆すべきはCO2排出の大幅削減です。生産量が増える中で中期目標を1年前倒しで達成しただけなく、それを製品のライフサイクル全体で実現したのは立派です。多くの企業が断片的/部分的な狭義の削減に留まる中で、ライフサイクル手法を貫いたのは称賛されます。経営陣と現場が一体となって推進してきた努力の賜物だと強く感じました。
さて、昨年末のCOP21で誕生したパリ協定は、世界の目標として排出ゼロを掲げました。世界では、既に多くの有力企業がゼロ・エミッションを目指して鎬を削っています。とすれば、富士フイルムグループも2020年度30%削減の先を見据えた、より意欲的な長期目標を掲げてほしいと思います。より高い目標はより多くの人の目に留まり、より意欲をかき立てます。それ以上に重要なのは、脱炭素化が21世紀の競争に勝つための必要条件になってきたからです。
富士フイルムグループのさらなる健闘を心から願っています。
第三者意見を受けて
「製品のライフサイクル全体で、2020年度までに2005年度比30%のCO2の排出削減を実現する」という富士フイルムグループの目標への取り組みや中期目標を1年前倒しで達成した2015年度の成果を高く評価してくださり、ありがとうございます。
今後、富士フイルムグループは、パリ協定で掲げられた排出ゼロ目標も見すえ、現在の2020年目標をさらに意欲的にした2020年以降の中長期目標を設定し、事業プロセスでのCO2削減と、製品・サービスを通じたお客様先でのCO2削減の両面について、全力で取り組んでいきます。
(富士フイルムホールディングス 経営企画部CSRグループ)
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