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【重点課題1】アンメットメディカルニーズへの対応

 

※このページはサステナビリティレポート2018の記事内容です。

目標と主な成果

2030年目標

富士フイルムグループは、有効な治療法が確立されていない医療上のニーズ(アンメットメディカルニーズ)に対して、新しい治療法の開発と普及に取り組んでいます。写真フィルムの開発・製造で培った高機能素材合成技術や高度なナノ分散技術、解析技術、生産エンジニアリング技術等とのシナジーが期待できる、優れた技術をもつパートナーと積極的に協働することで、再生医療、細胞治療など新たなソリューション開発と、こうした先端医療が広く普及するためのアクセス向上の両面での貢献を目指します。

2017年度の活動

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【目標】新たな治療ソリューションの開発
(①再生医療、②がんへの対応、③感染症への対応)

  1. 表皮水疱症への適応拡大に向けて「自家培養表皮ジェイス®」の一部変更承認申請書を厚生労働省へ提出
  2. 抗がん剤「FF-10832」の進行性の固形がんを対象とした臨床第Ⅰ相試験を米国で開始(がん組織に薬剤を選択的に送達し、薬効を高めるリポソーム製剤の開発)
  3. 難治性褐色細胞腫を対象とした治療用放射性医薬品「F-1614」の臨床第Ⅱ相試験を国内で開始
  4. 抗がん剤「FF-10101」の再発・難治性の急性骨髄性白血病を対象とした臨床第I相試験を米国で開始
  5. PET検査用放射性医薬品 フルデオキシグルコース(18F)静注「FRI」新発売
  6. 「新規作用様式のパンデミック対策用抗インフルエンザ薬の開発」で平成30年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞」を受賞
  7. 血小板減少症候群(SFTS)を対象とした抗ウイルス薬「ファビピラビル」の国内臨床第Ⅲ相試験を開始

【目標】新たな治療ソリューションへのアクセス向上
(④開発・生産受託での貢献、⑤先端医療を支える製品の開発・普及での貢献)

  1. バイオ医薬品(*)の開発・受託事業をさらに拡大、米国テキサス拠点の新生産棟を稼働
  2. 独自技術を生かし、高品質で信頼性の高いリポソーム製剤の安定生産を目指して新工場を建設
  3. 細胞培養に必要な培地のリーディングカンパニー「Irvine Scientific Sales Company」「アイエスジャパン」を買収

* バイオ医薬品:化学合成でつくられる従来の低分子医薬品では実現できない作用を持つ、たんぱく質などの生体分子を活用した医薬品で、インスリン、ワクチン、抗体医薬品などを含む。抗体医薬品とは、生体内で病原菌やがん細胞などの異常な細胞を認識して生体を保護する免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品

今後の活動&目標

  • 当社グループによる再生医療製品の上市・適応拡大及び同製品の製造受託拡大への取り組み
  • 当社新薬パイプラインの開発の加速
  • バイオ医薬品の製造受託拡大
  • 新たな先端バイオ医療(遺伝子治療など)を支える「培地」や生産技術などの開発と普及

再生医療、細胞治療普及を目指した細胞培養に必要な培地の開発と普及

「培地」は、バイオ医薬品や再生医療製品などの研究開発や製造における細胞培養に必要不可欠な基幹技術・材料で、培地の品質によって細胞培養の品質や効率が左右されるといわれています。現在、新たな治療法としてバイオ医薬品や細胞を用いた治療等への注目が高まるのに伴い、質の高い培地のニーズも高まっています。

富士フイルムグループは、日本初の再生医療製品を開発・上市したジャパン・ティッシュ・エンジニアリングをグループ傘下に収めるなど、再生医療製品の研究開発を加速させています。2017年には試薬、培地、化成品臨床検査薬を製造・販売する和光純薬工業(現:富士フイルム和光純薬)を連結子会社化し培地事業に参入、これにより細胞培養に必要な3つの要素すべてを当社グループ内に保有しました。さらに2018年6月には、培地のリーディングカンパニーであるIrvine Scientific Sales Company(ISUS)とアイエスジャパン(ISJ)を買収しました。ISUSとISJは、バイオ医薬品製造向けの培地や体外受精・細胞治療用途の培地などを幅広く取り扱う、培地のリーディングカンパニーです。高い研究開発力や品質管理力、長年蓄積してきた実績やノウハウなどを生かして、顧客ニーズに合わせた最適なカスタム培地を開発・製造できます。これにより富士フイルムグループは、バイオ医薬品から体外受精・細胞治療の領域にわたり幅広いソリューションの開発が可能になるとともに、全世界の製薬企業やバイオベンチャー、アカデミアなどに培地を提供することが可能になります。

富士フイルムグループは、多くの可能性をもった再生医療や細胞治療を普通の医療として広く普及させるために、グループ内の技術を結集し、産業化を推進していきます。

再生医療に必要な3つの要素 ※3つの要素の関係を「稲作」に例えたのが下記

[図]再生医療に必要な3つの要素

がん組織に薬剤を選択的に送達し、薬効を高めるリポソーム製剤の開発

富士フイルムグループは、がん・中枢神経系疾患・感染症に重点を置いた新薬開発に取り組むとともに、ドラッグデリバリーシステム(DDS)(*)の技術開発を推進しています。その代表例がリポソーム製剤です。薬剤を選択的にがん組織に届け、薬効を高めることが期待できる画期的なもので、既存薬のみならず、核酸医薬品・遺伝子治療薬への応用展開など、治療のあり方を根本的に変えるポテンシャルを持っています。2018年5月には進行性の固形がんを対象としたリポソーム製剤「FF-10832」の米国での臨床試験を開始しました。また富山化学工業の医薬品生産拠点に、リポソーム製剤の生産工場を建設し、2020年2月に稼働を開始する予定です。同工場では治験薬製造や商業生産を行い、高品質なリポソーム製剤を安定的に供給していきます。

* ドラッグデリバリーシステム(DDS):体内で必要な量の薬物を必要な部位に必要なタイミングで送達する技術。薬剤をリポソーム製剤にすることで、がん組織に薬剤を選択的に送達し、薬効を高めて副作用も抑制できると期待されている

有効な治療薬として期待されるバイオ医薬品の普及

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動物細胞や微生物を利用してバイオ医薬品に使われるタンパク質を効率的に産生する高度なバイオテクノロジーや、培養から抽出、精製にいたるプロセスの管理ノウハウなどを持つFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesの新生産棟と導入する2,000リットルの動物細胞培養タンク

バイオ医薬品は、副作用が非常に少なく高い効能があり、アンメットメディカルニーズの有効な治療薬として期待されています。しかし生産には高度な生産技術と設備が必要なため、製薬企業などがCDMO(*)にプロセス開発や製造を委託するケースが世界的に急増しています。富士フイルムは、写真フィルム事業で培った生産や品質管理の技術を生かし、バイオ医薬品の開発・製造受託事業を推進、高品質なバイオ医薬品の安定供給をサポートしています。2017年度には、CDMO拠点の開発・生産設備を増強するために、米国テキサス拠点に新たな生産棟を建設し、抗体医薬品の生産に必要な設備を追加導入するとともに、英国拠点には同医薬品の生産プロセスの開発拠点を増設し、受託体制を強化しています。

* CDMO:生産プロセスの開発受託及び製造受託を行う会社・組織

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